ビル用マルチエアコンと通常の業務用エアコンの違いとは何でしょう。通常の業務用エアコンはパッケージエアコンと呼ばれたりするので、PACと表記されることもあります。

かたやビル用マルチエアコンは業務用マルチエアコン、ビルマル、ビルマルチ、ビル用マルチなどと呼称されています。

1982年に初めてダイキン工業から発売されました。配管長の長さ、室内機を個別で動かせる省エネ、大容量の室外機、と快適なビル空調を担う機能性の高いエアコンです。

パッケージエアコンとの違い

ではビル用マルチエアコンはどういったエアコンなのかを、通常の業務用エアコンであるパッケージエアコンとの違いを軸にみていきましょう。

冷媒配管の自由度が高い

配管高低差

エアコンは室外機と室内機の設置位置の高低差に限度があり、パッケージエアコンでは30mが限界です。冷媒配管において、冷媒ガスを循環させられる高さに限界があるためです。

この高低差がビル用マルチエアコンでは、40~50m(※改装により90mまで延長できる)と設置可能な範囲が広がります。

パッケージエアコン
ビル用マルチエアコン

配管の長さ

冷媒配管では、高低差だけではなく、長さにも可能な範囲があります。

パッケージエアコンでは、馬力ごとに違っており、5馬力なら50mほどで、10馬力なら100mほどとなっています。

この冷媒配管の長さも、ビル用マルチエアコンではパッケージエアコンより長く、設置場所の可能域が広がります。

ビル用マルチエアコンは容量にも寄りますが、165m~1,000mとパッケージエアコンと比べ、圧倒的に長い配管を敷くことができます。

パッケージエアコン
ビル用マルチエアコン

容量の違う室内機を複数台繋ぐことができる

パッケージエアコンでは、室外機1台につき複数台の室内機がセットになっているものが通常にあります。ただ室外機の容量を均等割したものがセットになっています。たとえば、室外機が10馬力の場合で、室内機が2セットついているものでは、「室内機5馬力が2つ」というカタチに決まっています。

これがビル用マルチエアコンなら、10馬力の室外機1台に対して、室内機を1馬力1台、2馬力1台、3馬力1台、4馬力1台と違う馬力で、かつ複数台のエアコンを接続することができます。

複数台の室内機を個別に運転 (電源が外と内で別々)

通常のパッケージエアコンでは基本的には、室外機単位で室内機を制御します。パッケージエアコンは、電源を室外機からとっていて、室内機にも電力が流れています。室外機と室内機とがセットで動いているイメージです。

ビル用マルチエアコンは室内機ごとにON/OFFを制御でき、使っていない室内機は電源を切ることができます。運転時に全ての室内機が、動いているわけではないので、電源を室外機・室内機と別で給電しています。

これは1台の室外機で色々なタイプの空間(部屋)を温調することができる、とういうことを示しています。

デメリットとしては、室外機に故障が起きてエアコンが停止してしまった場合は、セットの室内機の全てが止まってしまうとういう点です。

まとめ

・ビル用マルチエアコンは、室内機が個別に運転できるので、室内機だけを色々な部屋で使える

・冷媒配管の自由度が高い

建物の規模感としては3,000㎡以上の中大規模の建築物を目安に設定されています。

室外機の容量やシステム機能が高く、価格も高めに設定されています。

色々なタイプのビル用マルチエアコンがあります

ビル用マルチにも多様なタイプのエアコンがラインナップされていますので、紹介します。

・リニューアル型

今まで使っていたエアコンの入替時に、配管をそのまま利用できるタイプのビル用マルチエアコンです。

・コンパクト型

ビル用マルチエアコンでありながらも、コンパクトな設計になっています。扱える容量は大きくないものになりますが、小さい容量でも部屋ごとに馬力を分けたいとき、設置場所に制限があるとき(配管長やサイズ)に便利です。

・冷暖同時/切替型

部屋ごとに温度差がある場合に、冷房と暖房を同時に使えます。サーバー室と作業場で、冷房と暖房を同時に使いたいときなどに向いています。

・氷蓄熱型

省エネ機器です。昼間の冷房効率を上げる為に、氷蓄熱層が付いており、夜間に氷を作ります。氷蓄熱層の氷を活かして昼の冷房に役立てます。

・寒冷地型

寒冷地において暖房機能を発揮するために、室外機の機能が高くなっているタイプのビル用マルチエアコンです。パッケージエアコンにもラインナップされています。